パーフェクト・インパーフェクト
「こん、こんばん、こんばんは!」
しまった。
どもりすぎてしまった。
薄っぺらい機械のむこうで相手がくつくつ笑っているのがわかる。
「いきなり電話きてびっくりした。誰かと思った」
「あ、いまお時間だいじょうぶですか!」
「うん、大丈夫。さっき帰ってきたとこ」
なるほど、つまりいま、おうちにいるということですね。
ということは、奥さん(仮)と娘ちゃん(仮)も、そこにいらっしゃるのですか。
それとももう夜11時近いし、赤ちゃんとママって寝ちゃってるものかな。
というか。
いまさらだけど、わたしけっこう、非常識な時間に電話しちゃっているんじゃないの?
「あの、こんな遅い時間にごめんなさい。ぜんぜん気にしてなかった……」
「ん? ほんとだ、俺もぜんぜん気にしてなかった。逆にこんな夜遅くによかった?」
優しいという形容詞がこんなにピッタリ当てはまる人、なかなかいないと思うよ。
間違えた。
こいつは平気で不倫しやがるサイテー男なんだった。
あぶない。
また騙されるところだったじゃん。