パーフェクト・インパーフェクト
「む、迎えに……?」
「うん、そのあとどうしようか。行きたい場所とかってあるんだっけ」
次々と移り変わる話題にめまいがしそう。
迎えに来るとか来ないとかの話題、ウンだけで簡単に済まされちゃった。
「あの、あの、あの」
しゃべりたいのにぜんぜんなんの単語も出てこなくてびっくりする。
皆川さんはいっさいの言葉を止め、わたしがなにかしゃべるのをじっと待ってくれた。
きっと何分でも、あきれないで、急かさないで、静かに待ってくれる気がする。
彼はそういう人だ。
すうっと息を吸った。
行きたい場所、ひとつだけあるんだ。
もう決めている。
「あの……撮影で予定してる、テーマパークに行きたいです」
日本最大級のテーマパーク。
海沿いにあるその夢の国に、好きな人と行きたいと思わない女の子なんてきっといない。
べつに、皆川さんはわたしの好きな人じゃないけど。
「うん、いいよ。そこにしよう」
ほんとうに?
あんなキラキラでふわふわな場所、大人のバンドマンは嫌がるかと思っていた。
「いいんですか?」
「もちろん、いいよ」
電話越し独特の、電子音のまざったような声が優しく鼓膜を揺すっていく。
彼はあの夢の国へ、いったい何人、わたし以外の女の子を連れていったんだろう。
そんな聞いてもどうしようもないことを、どうにも聞いてみたいと思ってしまうのは、なんでかな。