君を好きになるって、はじめからわかってた。
恋の種
昼休みもそろそろ終わる頃。
私、安井まどかは親友の結菜のケガの手当のために保健室へやってきた。
たまたま先生が留守みたいで、私が手当てをすることに。
保健室の窓からみえるグランドは、体操着姿の1年がサッカーをしている。
「いったーい! やだ! もう無理!」
結菜の叫び声が響く。
多分、廊下の端まで聞こえるくらいの。
「ったく、岩泉にみとれて階段踏み外すとか、マジでありえないんだけど」
私は呆れた口調で結菜に説教をしながら、彼女の足の傷口に消毒をする。
結菜の顔が痛さで歪んでいる。
でも私が『我慢だ!』って目付きで結菜に釘を刺すと、彼女も理解したのか叫ばずに涙目で痛さを訴えた。
望月結菜は背が低くて、それだけで可愛いのに目がくるりと大きく、男子なら守ってあげたくなるようなコなんだけど、クラスメイトの岩泉和輝に一途で、もう2年間は片想い中。
奴と同じクラスになってからは、その想いが加速してる気がして、たまにバカやって結果こんなことに……。
時々、そんな結菜が羨ましい。
好きな人に一途なとことか、近くにいるだけで緊張してしまうとことか、なんかキラキラしてて、私と大違い……弟しかいない私にとって、そんな結菜が妹みたいで、可愛くて、つい世話ばかりしてしまう。
「よし、終わり」
私がそう言うと、結菜は自分の傷口に息を吹きかける。
その時、ドアが開き男子生徒が入ってきた。