君を好きになるって、はじめからわかってた。

 っで、なんで私ココにいるんだろ?
 なんで、このコがココにいんの?

 日曜日。

 遊園地の入園ゲートの前で、私は立ちすくむ。

 あれ?
 この前、行かないってならなかった?

「お待たせ」

 満面の笑みで、青柳くんは私の手を繋いで入園ゲートへ向かう。

 ん?
 何コレ。

 繋がれた手をみつめながら考える。

 あぁ~、夢か。

「先輩、今日はやけに素直だよね? 俺は嬉しいけど」

 彼の言葉で、私はハッとした。
 記憶が鮮明に甦る。


 昨日、結菜からの連絡で遊園地に誘われた……までは良かったんだけど、今朝になってからドタキャンって。
 しかも私が遊園地に着いてからの連絡って……どうよ?



《ごめん、寝坊した! 代わりを呼んだから!》
《寝坊? 代わりって?》
《待ってればわかるよ。じゃ明日ね》

 待ってればわかるって、もう結菜のやつは勝手なんだから!

 勢いよく切られた携帯に、八つ当たりした。

 

 数分後。

 誰かが走って近づいてくる。

 えっ?
 代わりって、青柳愁人!?

「ごめん、待たせた」

 …………………えっ?

「なんてね。1回言ってみたかったんだ」

 彼は無邪気に笑ってみせた。
 その瞬間に、多分私の意識が飛んでしまった。

 

 そうだ!
 
 何やってんの私は!!

 私は慌てて、繋がれた手を振りほどく。

「とにかくお金!」
 
 財布をカバンから取り出そうとすると、青柳くんが「待った!」とストップをかけた。

「今日は俺に払わせてよ」
「青柳くんにしてもらう義理はないから」
「どうしても?」
「どうしても」
「……わかった。じゃ、今度はちゃんと俺が払う」
「今度なんてないから」

 私はきっぱりと断る。
 青柳くんは、渋々手を差し出した。
 その掌に入園料を乗せた瞬間、さっきまでこの手に握られていたんだとぼんやり思って、静かに自分の掌をみつめた。



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