君を好きになるって、はじめからわかってた。
手、大きかった……。
振りほどいてしまった手から溢れたのは、脱け殻みたいな寂しさかもしれない。
でもそれは気のせい、きっと気のせいで……。
ドクン……。
なのに、なんで?
なんでこんなにも、後悔してんだろう。
ドクン……。
私……どうかしてる?
「先輩?」
青柳くんが私の顔を覗き込む。
「ごめん。ちょっと調子乗りすぎた?」
そんな……謝られると、こっちが調子狂う。
「どうして来たの?」
可愛くない言い方が胸を締め付ける。
「ん~、先輩を好きって理由じゃダメなの?」
「好きになってもらう理由が……」
「それは俺の問題でしょ? 」
うぅぅぅん。
ごもっともな感じがして、何も言葉が出ない。
確かにそうかもしれないんだけど、心が納得しない。
「俺だって、好きになるタイミングなんてわかんないし。だから、先輩が俺のこと好きになる可能性もゼロじゃないと思ってんだよね」
「また簡単に言うな~」
私は、ぼやくように言った。
「簡単じゃないよ。これでも結構勇気いるし。あとは、1人っ子だからワガママで、ガキっぽいのかも」
ガキっぽいって……。
直よりも、数倍は大人っぽいよ。
無邪気な青柳くんに、思わず笑ってしまった。
「やっと笑ってくれた」
「えっ?」
「さっきから、ずっと膨れてた」
「そう……かな?」
そんな膨れてた?
眉間を人差し指で伸ばしながら考える。
「ってか、保健室の時からか。先輩、あの時すっげぇ勇ましかったし、俺何されんの? って怖くてさ。なのにそのあとの絆創膏が手描きのイラストってギャップがね」
「あれは自分でも無意識で、ホント失敗だった」
「いや、俺にとっては大正解だった」
それが私にとっての失敗なんだってば。
ったく、全然伝わってない。
今度は、ちょっと意識的に膨れてみた。
それにしても、1人っ子なんだ。
弟がいる私にはわかんないけど、やっぱり小さい頃は寂しかったのかな。
まっ、これだけ人懐っこければ、友達は多かったんだろうな。
「先輩の弟って?」
「弟? 青柳くんの1コ下と保育園にいるけど」
それから青柳くんと弟の話を挟みながら、初めに乗る乗り物を決めた。