君を好きになるって、はじめからわかってた。

 次の日。

 部活の自主練を早めに終わらせ下駄箱へ向かうと、安井先輩らしき後ろ姿がみえた。

 迷わず追いかけ3年校舎に向かう先輩を余裕な感じで呼び止める。

「安井せ~んぱい」

 反応はイマイチ……素っ気ない。

 まぁ先輩からしたら、1回話したただけの後輩でしかないしな。
 存在自体忘れられてそう。

 そんな先輩に、もらった絆創膏をみせた。

「使ってないの!?」

 先輩、なんか顔が赤くなってる?
 何それ?
 可愛いとこ発見!!

「こんなの使えない。ここぞって時に使うんで」
「あっそ……ご自由に」

 もう普通に戻った。

「そうだ。2人の間に首を突っ込まないでね」

 立ち去ろうとした先輩が何やら意味深なことを言う。

 あぁ~、キャプテンと先輩の友達のことね。

「そんな他人の恋愛に構ってる余裕ないっすよ。俺も自分のでいっぱいなんで」
「そう」

 安井先輩は、またも素っ気ない返事で、俺を一人残したまま立ち去った。

「あんま伝わってないか」

 先輩の影を残した階段を眺め一言ぼやく。

「まどかは簡単にはいかないよ、モテモテくん」

 背後から聞こえた声に振り返る。
 昨日、安井先輩と一緒にいた確か……望月先輩だったか。
 っていうか、どっから聞いてたんだ?

「まどかは男に興味ない!」

 はっ?

 断言した先輩は、顔を赤らめて必死に言い訳をする。

「……いや、変な意味じゃなくって。過去のトラウマがあるからってこと」

 トラウマ?

「いいんすか? そんなこと俺に言って」
「う~ん、どうかな。ダメかもね」

 望月先輩は反省の色なんてみせず、軽く笑って階段を上がって行った。
 
 トラウマってなんだよ?

 少し納得のいかない彼は、手にしているカットバンをみつめ呟いた。
< 19 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop