君を好きになるって、はじめからわかってた。
次の日。
部活の自主練を早めに終わらせ下駄箱へ向かうと、安井先輩らしき後ろ姿がみえた。
迷わず追いかけ3年校舎に向かう先輩を余裕な感じで呼び止める。
「安井せ~んぱい」
反応はイマイチ……素っ気ない。
まぁ先輩からしたら、1回話したただけの後輩でしかないしな。
存在自体忘れられてそう。
そんな先輩に、もらった絆創膏をみせた。
「使ってないの!?」
先輩、なんか顔が赤くなってる?
何それ?
可愛いとこ発見!!
「こんなの使えない。ここぞって時に使うんで」
「あっそ……ご自由に」
もう普通に戻った。
「そうだ。2人の間に首を突っ込まないでね」
立ち去ろうとした先輩が何やら意味深なことを言う。
あぁ~、キャプテンと先輩の友達のことね。
「そんな他人の恋愛に構ってる余裕ないっすよ。俺も自分のでいっぱいなんで」
「そう」
安井先輩は、またも素っ気ない返事で、俺を一人残したまま立ち去った。
「あんま伝わってないか」
先輩の影を残した階段を眺め一言ぼやく。
「まどかは簡単にはいかないよ、モテモテくん」
背後から聞こえた声に振り返る。
昨日、安井先輩と一緒にいた確か……望月先輩だったか。
っていうか、どっから聞いてたんだ?
「まどかは男に興味ない!」
はっ?
断言した先輩は、顔を赤らめて必死に言い訳をする。
「……いや、変な意味じゃなくって。過去のトラウマがあるからってこと」
トラウマ?
「いいんすか? そんなこと俺に言って」
「う~ん、どうかな。ダメかもね」
望月先輩は反省の色なんてみせず、軽く笑って階段を上がって行った。
トラウマってなんだよ?
少し納得のいかない彼は、手にしているカットバンをみつめ呟いた。