君を好きになるって、はじめからわかってた。
「はぁ~!?」
日曜の朝。
枕元に置いてあった携帯が鳴り、布団の中から手を伸ばすと、声の主がキャプテンだと忘れるくらいの驚きでベッドの上で飛び上がるように目が覚めた。
《だから! 望月の代わりに、お前が行けばって話し! 望月が行けなくなって、もう安井は遊園地に着くらしい。チャンスだろ?》
チャンスもなにも、こんなの絶対に望月先輩の計画だろ?
ったく、あの人何考えてんだ?
自分は進展しないくせにお節介な人だな。
それだけ安井先輩が好かれてるってことか。
先輩の希望通り、お化け屋敷に入った。
何かおかしい。
俺の目の前で異変が起きている。
先輩が冷静なのは知っている。
でもお化け屋敷だぞ!?
少しはビビってもよくねーか?
「わっ!!」
冷静な先輩の背中に大声を発したら、さすがに驚いたみたいで両肩がビクリと上がり足を止めた。
「あはははは」
「驚かせないでよ!」
「ごめん! だって先輩、全然怖がらないから。お化け屋敷といえば、女の子が怖がって抱きつくとこでしょ? 俺、寂しいじゃん」
「抱きつくとこかは知らないけど、仮にそうだとしても私は違うから!」
「なんだ残念。先輩は、大丈夫なの?」
「こういうのは慣れた」
「これって、慣れなの?」
「……多分?」
「そうなんだ」
慣れってなんだよ。
強がってるとか?
でもそういうとこも好きだな。
「なんか、調子狂う」
突然、先輩が呟いた。
「先輩の元彼にいないタイプでしょ?」
俺は、少し俯いた先輩の顔を覗き込んだ。
「付き合ったの1回しかないし、青柳くんに関係ないでしょ!?」
顔反らしたとこもいい!!
「関係なくない。俺にとっては、大事なことだけど」
あれ? 反応なしか……。
んんんん。
ダメだな、先輩には真正面からいきたいし、ちゃんと俺をみてほしい。
「やっぱり、黙ってるのはムリ。フェアじゃない」
「何が?」
「望月先輩に聞いた。安井先輩に、元彼とのトラウマがあるって。」
やっぱ、怒ってるよなぁ。
「それも、君に関係ない」
やっぱり……。
ツンとした先輩が離れるような気がした。
反射的に俺の腕が、先輩の腕を掴んだ時にはもう止められなくて……。
「2人に何があったかなんて知らないけど、俺をそいつと一緒にしないでよ」
先輩は、動かないままだ。
「俺、本気だよ」
掴んだ腕を引っ張って、先輩を抱きしめた。
先輩の髪の香りとか、細い身体とか、いろんな意味でヤバくなりそうで、先輩もなんか動かない。
ハッとして気づいた。
ここ、お化け屋敷。
俺の目の前で、血だらけの幽霊がスポットライトに照らされている。
「いや! 俺こんなとこで何やってんの!? マジで最悪だ! 先輩すぐ出よう!」
そのまま先輩の腕を引き出口まで走った。
「先輩、今俺の顔みないで。やっぱ今は……ムリ」
顔が熱い。
「……うん」
先輩にみられるわけにはいかない。
「はぁ、俺のバカ」