君を好きになるって、はじめからわかってた。
「さっきのって高坂先輩ですか?」
「知ってるんだ?」
「クラスの女子が騒いでた」
「相変わらず、有名人だなぁ」
「彼女がいるんでしょ?」
「そう! 今は彼女一筋!」
「へぇ~」


 その放課後、青柳くんが部活中に捻挫をしたらしい。
岩泉が携帯で報告してきた。

「なんで私に?」

 翌日。

 そんな青柳くんに会ったのは、足を庇いながら登校してる時だった。

 ったく、岩泉の奴。
 だからなんだっていうの?


 そんなふうに思いながらも、下駄箱まで来てしまった。
 なんか賑やかだ。

「青柳くん、私が鞄持ってあげる」
「いや、自分で持てる」
「えぇ~、遠慮しなくて何でも言って」

 女子が青柳くんの周りに群がってる。
 言い様のない何かが胸を突く。

「あのさ、俺そういうのいらないから」

 青柳くんが周りの女子に冷たく言葉を返す。

「ちょっと! そんな言い方ないんじゃない?」

 あれ? 私何いってんだろ。

 青柳くんも含め、みんなが注目する。

「人の優しさは、ちゃんと受け取りなさい」

 …………。

 やってしまった……。

 そう思った時、何故か女子たちが私に寄ってくる。

「ですよね~先輩? 青柳くん酷い!」

 女子たちは、私の周りを囲んで腕組みしたり、ベッタリくっついてきた。

 えぇぇぇ?
 何、この展開!!

「ぷっ! あははははは」

 青柳くんが1人笑いだした。

「男子にも女子にもモテる先輩って無敵だな」

 さっきまでの冷たい態度が嘘みたいに、その笑いが一瞬にして周りを溶かした。

「ごめんね、みんな。俺もその先輩がいいんだ」
「なっ、ちょっと変なこと言わないで!」
「残念! 青柳くんには渡しませ~ん」

 1人の女子が彼に向かって舌を出し、そのまま私を引っ張っていく。


「なっ、何事!?」

 途中、結菜にみつかり助けを求める。

「いや、ちょっと変なことになって……」
「あんたら、教室に戻りな。まどかを返して」

 結菜が野良犬を追い払うようにして、彼女たちから私を解放してくれた。

 いつもの結菜じゃないみたいに頼りになる。
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