再会からそれは始まった。
そろそろ限界か。

俺は迷ったあげく、「今日は帰れない」とメッセージを打った。

今朝の地下鉄の中で感じた花の身体のぬくもりを思い出す。

俺がどんだけ我慢してるのかわかってんのかな、あの女は。

一緒に暮らしている中で、俺が無理やりやれるチャンスなんていくらでもあったはずだ。

でも、そうしないのは花の気持ちが欲しいからだ。

逆に、寝ている俺の布団の中まで入ってきて夜這いしてきたっていい。
こっちがそう思っているのに、花にとっては、俺はただの同居人。
まるで兄とかと一緒に暮らしているような感覚だ。

それならこっちだって、とことんそうしてやる。
意地を張っているだけなのはわかっている。

もし、俺が同じ地下鉄に乗っていなかったら、花は別の見知らぬ男の胸に押しつぶされていたのかもしれないし、今までだってそんなことはあったのかもしれない。

あんなんだと痴漢にあったっておかしくないぞ。

そして、また自分の胸元あたりにあった花のふわふわの髪とあの体の感触を思い出す。
もう自分の気持ちに抑制がきかない気がする。
今夜会ったら、もう俺は止められないかもしれない。

そう思って、帰ることをやめた。　花のいるマンションに。

フロアの完成まで、あと一週間。

アメリカにとりあえず行って、もう一度状況を見て来なければならない。
もし、俺が花についてきて欲しいと言ったら、彼女は来てくれるのだろうか。

俺は首をふる。　彼女には大切なものがここにたくさんある。
それを置いてまで、俺についてきてくれるとは考えられない。
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