再会からそれは始まった。

「やっぱり、帰る。」

というメッセージが入って、私は憤慨する。

もう、どこまで自分勝手なの? と同時にホッとした自分もいる。

私が、ちょうど今帰るところだとメッセージを入れると、私たちが再会した場所、あのイタリアンのお店で待ち合わせしようと言う。

「花もお腹へっているだろ?」

背後には、B.C.square Tokyo が、綺麗にライティングされて光っている。
まだまだ、あのビルは眠らない。
レストランの中へ入ると、南くんはもう既に到着していた。

私たちは、冷えた白ワインを一本頼んだ。
みずたこのマリネがおススメだと店員さんが言うので、それとサラダとフォカッチャを頼む。
一口ワインを口に含む。
「おいし」
私がつぶやくと、南くんは、私と目が合ってフッと少し笑う。

私たちは、いつもより口数少なく、ゆっくりと食事をしてお酒を飲んだ。


朝のあのちょっとしたハプニングがそうさせているのか、なんだか何を話していいかわからない。

食事も終わって、残りの白ワインをちびちびと飲む。

私は、口を開いた。

「帰らないっていうから、てっきり女の人とデートかと思った。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「アホか。」

多分、私はもう自分の気持ちをこのままごまかしたまま、南一徹とは一緒に居られない。

いつでも、彼は冷静で落ち着いている。
私ばっかりこんな風に彼に振り回されている気がしてしょうがない。
だいたい、押しかけて来たのはどっち?

南一徹は、ジーッと私を観察するように頬杖をついてまっすぐ見つめている。


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