再会からそれは始まった。


俺は、にこやかに話をしながら、心の中で悪態をついていた。
このおっさんたち、早く帰らねえかな。

この分だと今夜もお預けになりかねない。

今日は、日本の経済界のドン達にこのビルをご案内するという大名目だから仕方がない。
二号店は絶対に出さないと言い張っていた老舗の割烹を口説き落とし招致した自慢の店と上の会員制のラウンジに招待をする。
えらく気に入っていただけたようで、まあこれからもこういった重鎮たちにもご利用願いたい身としては、今日は辛抱のしどころだ。

「しかし、南くん。ここのラウンジに女の子はおかないの?」

俺は苦笑して
「大臣なら、ご夫人を一緒にここにお連れしたら良いじゃないですか?喜ばれますよ。」

「またまた、そういう粋じゃないこと言って。妻となんかここには来たくないよ。」
とウンザリした顔をする。

「では、秘密のご婦人とでも。」

がはははと下品な笑い方をして付き添いの会長が俺の肩をたたく。
「南くんは、そういうところで遊ばないのかな?楽しい時間をこのビルで過ごさせてもらったから、この後ご案内しよう。」

俺はまた苦笑して
「勘弁してくださいよ。私は、あんまりそういうところへは行かないんで。」

「硬派だなあ。君が羽目をはずすところを見てみたいよ。」

「まだ28だろう?遊び盛りだ。」
がはははと笑い声が響き渡る。

「まだ、うちうちですが、私は近々アメリカに渡る予定でして。」
俺は切り札を出す。

「え?!そうなの?!」

「次の後任はきっと喜んでお供しますから。」
と笑う。

「え、じゃあ、退任するってことかい?」

「いえ、スティーヴンの元で修業してきます。」

「・・・・・・。」

そう、俺はもっと上を目指す。 
やらなければならないことはたくさんあるのだ。

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