再会からそれは始まった。
金沢 SIDE


僕と松山さんは、顔を赤くしながらぽつぽつと話し始める花さんを目の前にしてただただ唖然とするしかなかった。

あそこの52階のフロアを売却して工事が始まったと同時に暮らしているというから、もう一カ月も二人は一緒にいたということになる。

しかもはじめは、アメリカに行くまでの仮住まい。
ただの同級生として、ルームシェアをしていたという。
身体の関係も無し。

「ほんっとに何もないわけ?」
ずいっと松山さんが問い詰める。

「う・・・・。」

「怪しい・・・・。」

「その・・・・アメリカに一緒に行こうと言われて。」

「はい?」

「行くと言いました。」
花さんは、犯人がついに自供するような言い方で白状する。

「それでも、身体の関係はないと?」

「えっと、今のところは。」
花さんはうろたえるように言う。

「なにそれ?ただついていくだけ?」

松山さんがキリキリと声をあげてヒステリックになっていく。

僕は、今までのボスの言動を思い出す。
再会したあのレストランで、花さんを見つめていた目。
納品ギリギリで、コーヒーショップで鉢合わせたあの時。
花さんが泥酔した時、僕から花さんを引きはがし「飲み過ぎだ。」と花さんを叱っていた姿。
「一緒に住んでるから。」と淡々と言った低い声。

いろんな女の人と浮名を流したとしても、最後には花さんしか見えなかったのかもしれない。

いい女の趣味していると思うな。
さすが目の付け所が違う。
僕だって彼女の魅力にひかれたんだから。

あのボスに対する親近感もさらに沸いてきた。
僕は複雑な感情で、花さんの話を聞くしかなかった。



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