再会からそれは始まった。

秘書 松山 SIDE

この娘の言っていることがわからないわ。
嘘ついているのかしら?私の大失恋を思いやって。
やっぱり私が感じた最初の胸騒ぎの通り、彼女が南さんの固い重い心の扉を開けたということね。

私は、ため息をつく。
「もういいわ。わかったから。」

磯崎花は、小さくなって
「スミマセン」
という。

「あやまらないでよ。私が惨めになるだけじゃない。」

金沢君が私の顔を見る。
悪かったわね。私は南さんにずーっと片思いだったんだから。

「あと、黙っててごめんなさい。」
磯崎花は、ぺこっと頭を下げる。

私はため息をついて頬杖をつく。
「やっぱり、アメリカ行ってしまうのね。私も身の振り方考えないと。」

「松山さんも行きましょうよ!」
磯崎花はとんでもないことを言う。

「いやよ。南さんの他にあなたの世話もアメリカでするなんて考えただけでぞっとするわ。」

金沢君も下手な励まし方をする。
「松山さんの仕事っぷりならどこでも通用しますよ。広報部にきたらたちまちエースでしょ。」

「私が広報部なんてあり得ないわ。」

「でも、、、私、まだよくこの状況に頭がついていっていないんです。」
磯崎花は、少し苦しそうな表情をする。

「どうして?」

「なんで、私なんでしょう? 他にもいるでしょう?ふさわしい人が。
どう考えたって不釣り合いだし。」
珍しくしょぼんとしている磯崎花を見て、私と金沢君は目を合わせる。

こういうのって本人が一番わからないのかもしれない。
南さんにはあなたしかいないって事。
悔しいから教えてあげないけど。
しばらくそうやって悩んでいなさいよ。





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