再会からそれは始まった。
秘書 松山 SIDE
ああ、なんだか涙出そう。
南さんがこちらへ歩いてくるわ。
私は気持ちをきりかえて、仕事モードの顔になる。
「ご苦労様です。 今、お二方、お帰りになったんですね。」
「ああ、やっとな。」
とため息をつく。
金沢君もにわかに緊張した面持ちで
「ご苦労様です!」
と声をあげる。
磯崎花だけは、どうしていいかわからない感じでモジモジしている。
「お前らは楽しく宴会か?」
と南さんはフッと笑う。
「磯崎花の糾弾会ですわ。」
さらっと言ってやる。
南さんは、すぐに事情を理解したようで、一瞬磯崎花を見たこともないような愛情にあふれた目で見つめ、すぐあの無表情な少し怒った顔になって
「花、どこまで話したの?」
と低い声で言う。
「・・・・・。」
磯崎花は顔を真っ赤にしてうつむいてモジモジしている。
ああ、腹立つわ! なんなのよー!これは!
「ああ、あらかた話したってことかな」
南さんは、諦めたようにそう言う。
「まあ、そういう事です。」
私は、冷たく言う。
「ま、お前ら二人にかかったら、隠し事もできないしな。」
そう言って苦笑する。
「アメリカに行かれるんですね。」
聞きたかった事を聞く。
「ああ。正式には来年度。それまでも、何度か行き来することになると思う。」
「そうですか。」
「お前はどうする? 松山も行きたいなら人事には俺から話を通す。」
「お断りします。私は、日本に残ります。」
南さんは、少し笑って
「そうか。」
私と金沢君の顔を見て
「今日はこいつにつきあってくれてありがとう。 じゃ、もらっていくね。」
磯崎花の首ねっこを摑まえるようにして、そう言う。
磯崎花は、慌てて
「今日はありがとうございます。また!おやすみなさい!」とぺこっと頭を下げて再びビルの中へ戻っていく南さんの後について行った。
金沢君がため息をつく。
「これから凶暴なボスライオンに食べられる野うさぎっていう設定ですかね。あれは。」
「ええ、ほんとに。私も前に同じように思った事があるわ。」
私は思わず笑いだしてしまった。