再会からそれは始まった。
「金沢君にも聞かれましたよ。それ。」
私は、少し笑う。
「逆に私は、今の南君のことを聞きたいです。 どうやったらあの年で世界を股にかける企業の日本法人のトップになれるのかしら。 スタート地点は、私も10年前は同じだったっていうのにねー。」
私は、ほうっとため息をつく。
「でもね、高校の頃は全くというほど話しませんでしたよ。 だから彼のことはあんまり知らないんです。ただの一緒のクラスメートの1人。
彼、女嫌いだったから、女子と一切口聞かないし。 アメフトのキャプテンで、男の子たちからはすごい信頼もあって人気者だったけど、図体デカくて態度もデカくて女子には一切笑顔を見せないから怖くてねー。近寄りがたかった。」
冷たく冷えたビールがおいしい。
この焼き鳥もいい焼き具合。 ひとつひとつも大きいし、文句なし。
お気に入りの店リストに仲間入り。
松山さんは、ビールのジョッキに手を伸ばすのをハタッと止めて
「女嫌いですって?」
と眉間にしわをよせてもう一度聞く。
「はい。あまりにも避けるから、ホモじゃないかという噂まで。」
私は、おかしくて笑い出す。
ビールも回って、もう松山さんに対する緊張もなくなって、友達と飲んでいるような感覚になる。
「南くん、自分でお弁当作っていて、すっごくそれが美味しそうでねえ。」
「お弁当?!」
彼女は卒倒しそうな表情で聞き直す。
「南君、母親いなかったから、身の回りの事全部自分でしてたし。知りませんでしたか?」
「それは、知っているわ。父親と4人兄弟の男ばっかりの家族で育ったっていうのは、有名な話よ。彼は今一番の若き成功者として注目を浴びているから、取材や本の出版までたくさんの依頼があるのよ。みんな、彼のそのエピソードに興味を持つから。」
「へええ、本まで。」
松山さんは、頭を抱えて呟く。
「もうそれを聞いただけでも十分よ。考えられないわ。」
「?」