再会からそれは始まった。
金沢 side
いったいなんだって、僕がボスに呼び出されなきゃならないんだ。
なんか、でっかいミスでもしたかなぁ。
ものすごい憂鬱になりながら、上階のエレベーターのボタンを押す。
ああ、緊張する。 あの威圧感ハンパないし。
「失礼します。」
恐る恐るノックをして、部屋に入る。
秘書に松山さんが、そんなに緊張しないでという感じで微笑んでくれる。
この人、本当にこういうところがいい。 威圧感たっぷりのボスの間に立つ潤滑油。
英語、フランス語、中国語を操る才女。 完璧過ぎて太刀打ちできる男がいないっていう。
うちのボスならお似合いだよな。 この間の相合傘で何か進展があったらいいのに。
僕は、松山さんに促されて社長室へ入る。
「南さん、金沢さんがお越しです。」
ラップトップから、鋭い目をだけをこちらに向ける。
「ん。」
保存キーを叩いて、それからゆっくり頬杖をついて、こっちを見る。
うーん、様になるよな。
僕は、直立不動でそこに立つ。
ようやくボスは口を開く。
「オープニングパーティーなんだけど、なぜ新崎所長しか呼んでない?」
「え?」
「他にも制作のチームメンバーもいるだろう?」
「それは、予算と人数が限られていまして。それで各部署割り当てられた人数の中で厳選して招待状リストを作っています。」
「なるほど。そうしたら、他の営業部門なんかも招待者を厳選しているわけだ。」
「おそらくそうだと思います。」
「君に、パーティーの企画を練り直してもらいたい。」
「え!?」
「場所は、このビルのエントランス全域を使っていい。この招待者の他にも制作や工事に携わった人たちもできるだけ呼びたい。ビルに入っている企業の社員達もフリーに参加できるように。」
「ええええ!」
「気軽に参加できるようなもの。ドレスコードなんかいらないな。俺はそういうオープニングパーティーを望んでいるんだ。こんな上層部だけの気取ったのは好かない。」
「今から?ですか?」
「もちろん。君の上司には話を通しておく。予算は、少しは上乗せしてやれるが、なるべくこの範囲で。でも、みんなが喜ぶものを。」
「………………。」
出たー!!これがどんでん返し。まさかの僕にフラれるの巻。 天罰だよ。いや怨念だな花さんの。
話したら、ほうら私の大変さがこれでわかったでしょうよって勝ち誇った顔で言われそうだ。
「何か質問は?」
「いえ。ありません。途中経過で相談はさせてもらいます。」
否が応でもそう答えてしまう。
「そうか。ありがとう。よろしくな。」
とニッコリと笑う。 なんなんだー!その笑顔はー!!