再会からそれは始まった。
B.C.square Tokyo

このビルディングの名称が決まってから、建設作業が始まって4年になる。
完成までは、あと1か月。
俺は打ち合わせのため、まだ内装作業中のこの新しいビルに、作業用ヘルメットをかぶって通用口から入る。

テナントも埋まり、あとはオープニングに向けての広報戦略を具体的に進めて行くだけだ。
アッパーフロアーとミドルフロアーにあるこのビルのコンサルティング会社と不動産部門だけは、ビルのオープン一年前から旧事務所を引き払って新しく移転をし、事務所開きだけはして準備を進めている。

まだ工事中のビルの中で仕事をするから、社員はみんなマイヘルメットを持って中に入る規則がある。
間近で、このビルが出来上がっていくのを見れるのは、社員たちも仕事の士気があがる。

「南さん」

秘書の松山の声がして振り向く。
俺は、このビルを所有している、B.C.squareコンサルティングの事務所の社長をしている。
でも、社員には、苗字にさんづけで呼ばせている。
あまり、社員との垣根を作りたくないと考えているからだ。

「・・・・・」

「この後のランチミーティングですが、いかがなさいますか? お弁当を注文しましょうか?それとも、外で会われますか?」

「誰と会うんだっけ?」

「広告代理店の方々です。今後の戦略についてお話しする予定になってます。」

「外。」

「わかりました。近くの個室のイタリアンを予約するということでよろしいですか?」

「ん。」

二人で並んで歩きながら、松山はテキパキと今日のスケジュールの確認をする。

「本日は、十時より社内会議。博多の駅前開発のコンペについて。 十一時より来年度の予算会議第二回目。
十二時は、先ほど申しましたランチミーティング。広告代理店の方とあと新崎デザイン事務所の新崎所長も同席されます。14時30分に、アメリカと電話会議。 夜は、このビルの下にテナントとして入られる化粧品会社の社長と会食です。場所は、銀座の華長さん。 手土産も一応ご用意しました、いつものものです。」

「ん。悪いけど、予算の資料事前に見れる? 十時の社内会議の前に用意しておいて。あと、その化粧品会社の資料も。時間空いたときに目を通しておきたい。 あと、女性からの視点としてそこの化粧品はどうなの? それも君の意見をつけといて。」

「かしこまりました。」

松山は、おそらくまた急な無茶ぶりの資料集めをさせられると思っているのだろうが、そんなことは表情に出さない。
そして完璧な資料を用意してくるだろう。

この秘書の松山がいなければ、今抱えている俺の全部の仕事を回すことは不可能だろう。










< 5 / 133 >

この作品をシェア

pagetop