再会からそれは始まった。
金沢君の話を聞いて、南君らしいと思った。
彼は、できればこのビルに関係する人々全員に感謝したいと思っている。
二階のコーヒーショップに降りてきた時だって、各フロアをくまなく見ていたからだ。
私はふと思いついた。
「ねえ、テナントの試食会みたいにすれば?屋台を出すみたいにして。
金沢君は、全てのテナントさんとやり取りしてきたんじゃない。君が頼めば、お店の人は本社にかけあってくれると思うけど。」
金沢君は、ハッとした顔をして
「確かに。各店舗に協力をお願いできれば、ケイタリングの費用も抑えられますし、良い宣伝にもなる。それにお互いの店舗との顔合わせもこの場でできちゃいますね。」
「レストランだけじゃなくて、いろんな企業のオフィスも入るんだったら、そこの事業で何かアピールできるブースを出してもらうとか。」
「営業部も巻き込んでってやつですね。」
「なんか文化祭とかお祭りみたい。楽しそう!」
「さすが花さん。早速僕企画書作ります!ボスを唸らせるような良いパーティにしないと!」
「はは。頑張って。なんか手伝えることがあったら手伝うよ。」
「やっぱり、花さんは僕の女神だなぁ。改めてこの仕事終わったら、口説かせてください。」
「なんじゃい。そりゃ。。。」
サラッと金沢君がいった言葉にちょっと躊躇する。
あ、なんで、今、南一徹の事が頭に浮かんだんだろう。関係ないのに。
そういえば、ふと急に思い出した。
借りていたスウェット、どうしよう。
洗濯して取ってあるんだけど、さすがにこれを借りたと言って、秘書の松山さんに渡すことはできない。