再会からそれは始まった。
事務所宛のメールは、一応自分のスマホにも転送されるようにしている。
印刷所を出たところで、確認すると、南一徹からメールの返信がきている。
ここに電話をしろと。
いつでもいいって言うけど、今は仕事中だよね。
と思いつつ、今電話しないとなんとなく考え過ぎてできなくなってしまうような気がしたので、その番号にええいっとかけてみる。
10コール目で、南一徹は出る。
「……………………」
「あの、もしもし?」
「花か?」
あの低い声。
あれ、はじめて名前を呼ばれた気がする。 またドクっと胸が高鳴る。
「はい…………」
なんかこの先の言葉が出ない。
「今、どこにいる?」
「どこって、東京タワーの近く。」
「あ?」
「印刷所が東京タワーの近くにあってね。」
「ああ。」
そういう事かという感じで言う。電話だとますます言葉が少ないのが顕著になるなあ。
「服、お返ししたいんですけど。さすがに松山さんや金沢君に預けられるものでもないからどうしようかと思って。万が一、中見られちゃったら、なんかものすごい勘違いされそうだし。」
「…………………。」
「…………………。」
「いいからそれはお前のうちに置いておけ。」
「え。いや、返すって。」
「また、電話する。」
そう言って、一方的に南一徹は電話を切ってしまった。 あ、やっぱり忙しい時に電話してしまったかな。