再会からそれは始まった。


 秘書 松山Side



「花」って確かに言ったわよね。南さんは。
あの娘は、いつのまにそんなふうに南さんと親し気に電話できる仲になったの?
絶対に彼のタイプじゃないと思いこんでいたから、油断していた。ノーマーク。
しかも、電話を切った後のあの南さんの表情にドキッとした。
思いつめたようなあんな顔、見たことない。
まさかー、まさかよね。何かの間違い? ありえないわ。

磯崎花はといえば、最近、週末は一緒にテニスをしているのに、全然そんなこと私には話してこない。
絶対に問い詰めてやるんだから。

しかも、南さんは私を通さずに、彼女と連絡を直接とっているってことね。
聞き捨てならないわ。

次のテニスの約束をする電話で、彼女に単刀直入に聞くと、磯崎花は悪びれもせずこんなことを言う。


「ああ、あの時松山さん横にいらしたんですね。 じゃあ、話が早いや。 借りてたものがあるんで返したいんですけど、今度松山さんにお願いしちゃってもいいですか?」


テニスの後、近くのスタバでお茶をするのが恒例。

そこで、彼女の話を聞いただけで、また私は頭が痛くなってきた。

あの彼の52階の住居に入ったですって? 
いくら一週間お風呂に入ってないからって、人助けで自分のバスルームを貸して、徹夜明けの彼女をあの部屋で寝かすって、そんなお人よしみたいなこと彼がするかしら。

いや、でも、磯崎花だからこそ、なんの警戒感もなくそんなことができるのかもしれない。同級生のよしみとして。

彼は、どんな女性と会う時でも、例の52階の邸宅に入れる事はしないし、おそらくましてや相手の部屋にあがるなんてこともしていないはずだ。
会うときは、必ず外。 高級ホテルで逢瀬を重ねているという事を知っているのは、私が予約をしているからであって。。。。
それは、あの彼のルール、結婚はしないという前提で、お互いの生活エリアには近づかないと決めているようだった。
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