再会からそれは始まった。


でも、やっぱり、南一徹の部屋に行ったことの一部始終は言えても、あのキスのことは松山さんには言えない。

だって、あの一瞬の出来事は、自分でもあれは何だったのかわからないでいるし、もう、今となってはあれは幻想で、本当はキスなんかしていなかったようにも思えてしまう。

そのくらい、先日の南一徹の電話はそっけなくて、そのあとも特に連絡はない。

「なんで、最初から私に預けないの?」

松山さんの目は怒っている。 この人、もしかして南一徹の事がやっぱり好きなのかな? 

「え、だって、そりゃいくらこの私でも、男の人のスウェットなんてそんな意味深なものを本人に返してくれなんて松山さんに言えないですよ。」

松山さんは、またこめかみを抑えて顔をしかめて、ため息をつく。

「ああ、返すものってそれなのね。」

「なんかうちにあると落ち着かないし、松山さんから返していただけるとうれしいんですけど。
また電話するって言ってちっともかかってこないので、多分南くん仕事で忙しいんだと思います。」
そう言って紙袋を押し付けてくる。

「やめてよ。そんなもの私が南さんにかえって渡しづらいわ。勘弁して。」

「えー。」

松山さんは、鋭い目つきで私を見る。
「忠告しておくけど。手を出されないように。その気がないんなら。」

「へ?」

「彼に泣かされた女は五万といるのよ。あなたは、彼の周りにいる女性のタイプとは違うから安心してたけど。」

「・・・・・・・・。」
今の一言で、納得。 あのキスはやっぱりやばいのか?

私は、慌てて否定する。
「まさか、絶対そういうのはあり得ないです。それこそ、昔っから、南一徹は私のことを避けていたし。」

「ほんとに? あなたは、南さんのことどう思っているの?」
松山さんはズバッとそう切り出してきた。




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