再会からそれは始まった。
私はデザイナーとして十年やってきて、今、最も大きな仕事にとりかかっていた。

B.C.square Tokyo のプロジェクトチームで私の作品がコンペで採用されたのだ。

このロゴも、コンセプトにあった大人かわいいおしゃれなイメージで作ったポスターも、キャラクターデザインも私の作品。 他にも、こまごまとしたフロア案内のパンフレットや宣伝にかかわることは全て他のテナントさんとも打ち合わせをしながら進めて行く。 
正直キツかったけど、達成感はある。
東京の街から、このビルが見えると、あ、私のビルって思うくらい愛着が沸いてきた。
容赦ない注文や、直しは日常茶飯事で、もう彼氏に愛想をつかれてフラれちゃったくらい。
ここ数年は、仕事に没頭する日々だった。

もう少しで、ビルが完成。そうすればひとまず立ち上げのためにできたこのプロジェクトチームは、解散である。
ちょっと寂しいな。

今日も、B.C.squareコンサルタントの広報担当の金沢君を含めてテナントのお店の打ち合わせに。
工事用のヘルメットをかぶって、このビルに入るのももう慣れたもの。

管理人の田中さんが通行証を渡してくれる。
「おはよう。 花ちゃん。」
「おはようございます。」
「あいかわらず、男の子みたいだなー」
私のTシャツにボーイフレンドタイプのジーンズの姿に、ここのヘルメットをかぶったところを見て田中さんは言う。

私の名前は、磯崎 花。
昔からよく言われる。女らしくないだとか、少年みたいだとか。
確かに、もう高校の制服を着なくなってからは、ほとんどスカートなんて履いたことないかも。
そうはいっても、最近までは彼氏もいたんですよ。 
仕事ばっかりしていたら、浮気されちゃったけど。
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