再会からそれは始まった。

金沢SIDE

花さんが、全速力で僕たちの前を走り抜けていった。

声をかけたけど、気が付かずに。

忘れ物でもしたんだろうか?

「本当に騒がしい娘ね。」
松山さんが呆れて、彼女の後姿を見て言う。

「え? 松山さんは、花さんと何か仕事で接点でもあるんですか?」

「ないわよ。仕事では。」

焼き鳥屋ののれんをくぐる。
「松山さんがこんな店入るって、意外っすね。」

「初めてじゃないわよ。ここ。」
松山さんは、すまして入る。

らっしゃい! どおも!
とマスターが松山さんに笑顔であいさつする。

「えー?常連???」
僕は仰天する。

新崎所長が、僕たちに向かっておいでおいでと手を振る。
「美人秘書さんの登場だ! 嬉しいな、こんなふうに一緒に飲めるなんて。」
全く、新崎所長はそういう軽口をさらっと嫌味なく言う。

松山さんも笑顔で答える。
「所長、今、磯崎さんがものすごい勢いで走っていったけれど?」

「ああ、なんか落とし物したらしいよ。あいつは放っておいて飲もう飲もう。」
新崎所長が、二つ席をあけてくれる。

花さん、大丈夫かな?
気になったけれど、そのあいた席にとりあえず座った。






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