再会からそれは始まった。
もう一度、B.C.square Tokyoのビルを見上げる。
表のエントランスも、裏口の通用口ももうすでに閉まっている。
私は、南一徹に電話をする。
彼はすぐに出て
「今、下に降りる。」
とあの野太い低い声で言う。
私は、エントランスの柱に寄りかかって深呼吸をする。
目を閉じて。
時々、私はそうやって心を落ち着ける。
もうすぐ梅雨が明ける。
気持ちの良い夜の風が、私の頬をなでる。
気配がして後ろを振り向くと、南一徹がゆっくりとこっちに歩いてくる。
私たちは、向き合って立つ。
「…………………。」
相変わらず、無言で無表情のまま私を見下ろす。
「行こうか。」
彼は、歩き出す。
「どこへ?」
「おまえのマンション。前に泊めてくれるって言ったろ?」
「自分の家、目の前にあるじゃない。」
「じゃあ、そっちでもいいぞ。」
私の手を掴んで、ビルに戻ろうとする。
「ねえ、 呼び出したのは何?」
「…………………。」
私は、彼の手をほどく。彼をまっすぐ見上げる。
「聞きたい事があるんだけど。」
「…………………。」
「なんで、この間キスしたの?」