再会からそれは始まった。
また、どんでん返し。
もう、慣れたもんね。 あんなに綿密に打ち合わせをして時間をかけて作り上げても、最後の最後のどんでん返しというのは、デザイナー業にあってはよくあること。

「また、ここの社長なの??金沢君!!」

「えっとー。すみません。」

「ワンマンなんですね。」 
テナントのコーヒーショップの広報担当さんも諦めたような口ぶり。

「何回も確認したじゃないですか。」

金沢君も申し訳なさそうに、
「そのオッケーは、いただいていたんですけどね。 先日フロア会議があった時に、社長がふらりといらっしゃって、気になるところをざーっと指摘をされまして。それで、ちょっと。」

「遅い。もっと早く言ってよ。まるっと作り直しですよ。」

「社長も忙しい方で。もともとは僕たちに任されてはいるんですけど、ちょっと社長が目を通す機会があったので。そうしたら、いろいろと。。」

私は、ため息をつく。でも、その社長とやらの指摘が、ズバリ言い当てられすぎていてこっちも納得せざるを得ない。
それは、金沢君もそうなのだろう。

「だったら、最初っから社長にこの校正頼めばいいのよ。なんのためにお前がいるのだー!!」
金沢君の首を絞める。

金沢君は壊れたおもちゃのように、スミマセンスミマセンと連発している。

コーヒーやさんは、まあまあと言った感じで苦笑いして、私を止める。
「確かに私共は、磯崎さんにこのデザインでお願いしましたけれども、確かにオーナー社長さんのおっしゃる通りでもありますし、できればそのようになおしていただきたいと。」
コーヒーやさんも、下手に出ながらそんなことを言う。

ちっきしょーー、、、。
またもや白旗
「わかりました。 なおしましょう。 一日ください。」

「え、一日で大丈夫ですか?」

「ええ、やりますよ!一日で!」

「すみません。」

「しかし、B.C.コンサルタントの社長の顔が見てみたい。私が知っている限りの中で今までで一番のドSだわ。」

「そんなことないですよ。すごく気遣いのできる懐の大きい方ですよ。とても、28には見えない落ち着きのある人です。」

「28-???私と同じ年じゃないよ。それでここのオーナー?驚きだわ。」

コーヒー屋さんが仰け反って言う。
「知らないんですか?磯崎さん。有名人ですよ。若い成功者として今や経済界のカリスマ的存在です。雑誌でも取り上げられてますよ。」

「そういう雑誌さえも読むひまがないくらい無理難題を言われる今日この頃なんで。」
チッと舌うちして金沢君をにらむ。

「花さん28なんだ。けっこう年いってたんですね。」
アホ金沢がまた余計な事を言うので、蹴飛ばしておく。

「あいたたた。」

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