再会からそれは始まった。
1時間以上並んで頼んだピザは、本格的な窯焼きでアツアツでとっても美味しかった。

「美味しい!ね、これなら1時間並んだっていいと思えるでしょ?」

南くんは、少し笑って
「美味いもんさえ、目の前にしておけばお前はいつも幸せなんだろ?」

「よくご存知で。」

「ホラ、気をつけろよ。チーズ垂れてるぞ。」

「あわわわ。」

私は、南くんと1時間並んだって、楽しいんだけどな。。。
頬杖をついて、窓の外を見ている目の前の南くんをちらっと見る。
多分、私は彼を好きになっている。

この際、何人もの彼女の中の1人でもいいから、立候補してしまおうか。
いや、お前はそういうんじゃないし。。。
という、南くんの低い声が聞こえる。
うん、絶対そう言われる。そうしたら、凹むな。
昨日だって一緒にベットで寝ていたって、手を出されなかったんだから。
こうやって一緒にいると忘れがちになるけれど、少し冷静に考えてみれば南くんは世界にまたをかけた大企業の社長さんなのだ。
あの住まい、乗っている車、高級そうなスーツ、それに見合うだけの貫禄とキャリア。
どう考えても、私とは不釣り合い。

元同級生、友達としてなら、南一徹の近くにいられるかもしれない。

「あのさ。この前のキスのことなんだけれども。」
私は話を切り出した。

「・・・・・。」
南くんは、窓の外を見ていた目を私に向ける。

「まあ、アメリカじゃ友達同士でも友愛の印にキスするっていうし。
ハグもするし。アメリカ帰りの南くんとはそういう感じ。」

「お前、昨日からなんでそれにこだわってんの?」

「あの後、実はずっと気になっちゃったし。曖昧なの私いやだし。
言ったでしょ! 私は好きな人としかそういうことしない主義だって。」
私は、ちょっとムキになって言う。

「・・・・・・。」

「南くんにとっては、なんてことないことなのかもしれないけど。」

「・・・・・・。」

「ま、そういう事だから。私は全然気にしてないってことで。
またお友達としてこうやってご飯食べたりしよ。」

「・・・・・・。」

まだ、今なら間に合う。
本当に好きになってしまう前に、この気持ちをなんとか男と女の友情愛に持って行く事はできないか。
< 80 / 133 >

この作品をシェア

pagetop