再会からそれは始まった。
5
「あつーい!地獄!」
なんと、真夏だというのに、うちの事務所のエアコンが壊れた。
もうキャミソール一枚でいたって、PCの発する熱も加わって地獄のような暑さのオフィスだ。
新崎所長が立ちあがって叫ぶ。
「こりゃ、もう作業中止!
明日新しいエアコンが入るから、もう今日はやめだ!やめだ!B.Cのビアガーデンに行こう!」
新崎所長のこういうところ大好き!
みんな、うわーい!と叫ぶ。
ラップトップを閉じてデスクの上を片付け始める。
あれ以来、あのビルには行っていない。
同じ地下鉄の駅だけれども、うちの事務所とは反対側の出口だし、なかなか機会がないと足を運ばないものだ。
南一徹とは、数回、メッセージのやり取りをした。
それによると、彼はほとんど東京にはおらず、アメリカにいるようだった。
何か向こうで急な仕事でもあるのかな。
また飲みに行こうなんて誘える感じの雰囲気ではなさそうだった。
セントラルパークに、ビアガーデンがオープンするというポスターが地下鉄の駅構内に貼られていたので知っていた。 本格的なドイツ料理やこだわりのおつまみの出店が目玉らしい。
南一徹は、もう偵察したのかな。
偵察するなら、また私を誘ってくれればいいのに。
あ、また、私、彼のこと考えている。 いかんいかん。 首をふる。
みんなで、ビアガーデンで飲んでいても、52階あたりを見上げてしまう。
今はいるのかな?日本に。
メッセージで聞けばいいだけだけど、どうせそっけない一言が返ってくるだけだし、忙しいのかもしれない。
私は、ため息をつく。
自ら友達宣言をして、南一徹本人にだって釘をさしたのに、私がこんなんでどうする。
ぐいっと生ビールを飲んで、ぷはーっと息を吐く。
「おまえも、少しは女らしくしないと好きな男に振り向いてもらえないぞ。」
新崎所長が、私を軽蔑するような目で言う。
「おまえ、今、恋をしてるだろ?」
にやにやと新崎所長が私を問い詰める。
「もう酔っ払たんですか?所長。」
その観察眼、スルドイ。
「お前のその相手は、あいつか?」
汗をふきふき、スーツの上を脱いで外回りから帰ってきた金沢君がちょうど横を通った。