再会からそれは始まった。
ビアガーデンを見て、スティーヴンが興味を持つ。
少しここで飲みたいというから、席を設けさせる。
《しかし、日本は毎日がフェスティバルだな。ただのオフィスビルなのにたくさんのエンターテイメントがある。》
スティーブンは、だいぶご満悦だ。
ふと見ると向こう側にうちの社員達がいる事に気がつく。
あれ?新崎デザイン事務所のメンバーもいる。
俺は、とっさに花を探した。
いない。
俺は、スティーヴンに断り、席をはずし、新崎所長に、挨拶をしに行く。
「南さん。どうもどうも。すっかりこっちは酔っ払っちゃって。」
話を聞くと、エアコンが壊れたせいで、事務所全員でさっさと仕事を切り上げてここへ涼みに来たという。
それなら、花もさっきまで一緒だったんじゃないのか?
見渡しても、彼女の姿は見当たらなかった。
携帯がなる。仕事の電話か。
「失礼。じゃ、また今度ゆっくり。」
俺は、新崎所長に礼をして、電話に出るためにその場所を去った。
ふと、顔をあげるとその向こうに花がいた。
トイレにでも行っていたのか?
ゆっくりとのんびり一人で歩いている。
俺は、先方に手短かに話をし、また後でかける旨を伝えて、一旦電話を切り、花の元へと向かう。
「おまえのその恰好はなんだ? 一人だけ海にでも行っていたのか?」
花は、まだ日が暮れていない前からもう酔っ払っているようだった。
少し、足元がおぼつかない。
それにしても、その格好は露出多すぎ。
ぽおっとしたうるんだ目で俺を見上げる。少し頬が赤い。
「うるさい。放っておいてよ。」
「おまえ、飲みすぎだろ。」
「・・・・・・・。」
俺は、ため息をつく。
手のかかるやつだ。 今日は、こいつを家に送ってやる時間もない。
また、俺の部屋に監禁しておくか?
「花さーん。いたいた。大丈夫?」
金沢が親し気に花の肩を抱く。
「あ、ボス、彼女ちょっと酔っぱらっちゃって。」
「大丈夫。トイレ行っていただけ。」
花は、うつむいたまま俺の顔を見ようともしない。
「・・・・・・。」
そこへ、スティーヴンの娘のサラがやって来た。
《イッテツ、何してるの? 早く戻って来て》
《ああ、ちょっと待って。すぐ行く。》
《酔っ払いの女の子? 大丈夫?》
花は、ぼーっとサラを見やる。
「???ワタシエイゴワカリマセーン」
金沢が噴き出して笑いだす。
「花さん、飲み過ぎだって。」
《ごめんなさい。彼女、酔っ払っちゃって。》
ふふっと笑って、サリーが言う。
《日本って自由で安全よね。こんなんなったら、私の街だったら女の子はすぐに襲われちゃうけど。》
《そうですよね。本当に。僕もそう思います。》
金沢もなかなかイイ発音で英語を話す。
しかし、ホントにこいつは自覚ないのか? 無防備すぎるぞ。
金沢に、そんなふうに簡単に肩を抱かれている姿を見て、怒りを感じる。
「花、ちょっと来い。」
俺は、金沢から花を離し、自分たちの席の方へと花を引きずるように連れていく。
《イッテツその子、どうするのー?≫
サラもあわててその後を追ってくる。