再会からそれは始まった。
6
俺は、事務所の社長室で残務をする。
松山は、ちゃんと花をあのマンションまで送ったんだろうか?
珍しく、報告のメールか電話がない。
まあ、良いか。
社長室の扉がノックされて、松山が戻って来たのかと思う。
そのまま帰って良いと言ったのに。
開けると、そこにサラが立っていた。
《サラ、どうした? スティーヴンと上のスウィートルームに戻ったんじゃないのか?≫
サラが、俺の胸に飛びついてくる。
《今日は、帰らない。 イッテツの部屋に泊めて。抱いてほしいの。お願い。》
俺は、びっくりしてサラの彼女の青い目を見つめる。
俺は、彼女をやさしく抱きしめてやる。
《サラ。それはできないよ。》
《どうして。私には魅力がないってこと?パパがそう言ったわ。》
そうやって、サラは泣き出す。
俺は、ため息をつく。
《そんなことない。そうじゃない。本当に、それは君が望んでる事? スティーヴンの期待に応えたいから来たんだろう?》
俺は、彼女を落ち着かせて、手前のソファに座らせる。
隣に座り、手をとってまっすぐ目をみる。
わかってもらうには、逃げてはいけない。
彼女ときちんと話あわなければならない。
いずれにしろ、俺もサラもこの状況にどうしてよいかわからない節がある。
先月スティーヴンは、狭心症で倒れたんだ。それで、俺はここのビルのオープンがひと段落した後、急きょアメリカに飛んでいたわけだが、健康そのものだったスティーヴン自身が、急に自分がいなくなった先の事を不安に思い始めたのだ。
わからなくもないけど。
現代の医療でそのくらいの病、どうってことないって。
そう突っ込みたくなるくらい、スティーヴンは過剰に気にしていた。
彼女は偉大な父を持って、自分がその期待に応えるには、俺と結婚するのが一番良いと素直に思っている。
でも、俺は彼女を幸せにすることはできないし、そもそもこんなおかしな話を引き受けるわけにはいかない。
彼女だって、普通に一人の男を愛してハッピーな結婚をするのが一番だ。
サラは、俺の言う事に始めは反論していたが、最後は柔らかな表情になって俺の話にうなずく。
《でもね、イッテツのことは、好きよ。私、ふられたのね。イッテツには愛する人がいるんでしょ?》
《どうかな?でも、今は片思いなんだ。世の中、思った通りにはなかなかいかない。》
ふと、笑う。