再会からそれは始まった。
秘書 松山 side

すっかり朝寝坊。 しかも磯崎花の家で。
着替える時間もなし。
昨日と同じ服でとりあえず出勤しなくちゃ。私としたことが。
しかも、磯崎花に服を借りようとしたって彼女ったらろくな服を持っていない。

確かロッカーにクリーニングから返ってきた春物のスーツがあるはず。
下のスカートを変えればなんとかごまかせるだろう。

慌てて、秘書室に入るとなんと南さんがもう既に出勤をしていて、パソコンの画面をにらんでいる。
げっ。

「おはようございます。」
私は素知らぬふりをして、挨拶をする。 
南さんの視線が気になるわ。

「朝帰りか?珍しいな」
茶化すように南さんが言ってくる。

「磯崎花に捕まったんです。今日は彼女のマンションから出勤です。」

「ああ。」
そういえば、というような表情で、また南さんは、おかしそうにクスクス笑う。

「あいつは、大丈夫だったのか? 相当飲んでいたみたいだけど?」

「ええ。たちが悪いですよ。酔うと泣き上戸になりますし。」

南さんは声をあげて笑う。

「何がそんなにおかしいんですか?!」
私がムッとして聞くと

「いや。仲が良いんだな。」

「良くないですよ。あんまり同類だと思われたくないです。」

南さんは、ますます身をよじらせて大笑い。
こんな楽しそうに笑う南さんは、本当に磯崎花が現れるまでは見たことがない。
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