再会からそれは始まった。
スティーヴンは、まだ諦めきれない様子で、最後までしつこく俺を説得しようとする。

《まあ、まだもう少し自分は頑張ろう。イッテツが戻ってきてくれるなら。
それまでにサラも後悔するくらいに良い女になっているかもしれないぞ。
そのときにまた考えればいい。》

そう言って、サラを連れてアメリカへ戻って行った。

屋上から二人を乗せたヘリが、プライベートジェット機が停まっている飛行場まで飛び立つ。
爆風にあおられ、二人の乗ったヘリを見送ってから、松山が乱れた髪を気にしながら大きな声で、俺に聞く。

「南さん、来週から工事に入りますが、お住まいはどうされるんですか? 上のホテルをお取りになりますか?」

ああ、そうだった。
俺は少し考える。 
「そうだな。ま、後で結論を出す。」

「はい。」
松山は、またギリギリまで結論を伸ばすのねという心の声をしまい込み、返事だけはする。

俺もだいぶ彼女の事がわかってきた気がする。
思わず笑うと、松山は何がおかしいんですか?という顔で、俺の後をついてくる。

「あ、それから、これを。」
と手紙を渡される。

「サラさんからですわ。自分が旅立ったら渡してくれって言われました。」

「・・・・・・・。」


社長室に戻って手紙を読む。
サラには、あんな一瞬の出来事だったのに、全部お見通しだったようだ。




ちゃんとあの彼女とも向き合う事。
最後にそう書いてあった。
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