再会からそれは始まった。
「ねえ、アメリカに行くんでしょ?」
唐突に花はそう聞いてきた。
「あ?誰からきいた?」
「・・・・・・。」
花は黙ってお冷に口をつける。
「松山か? 意外と口軽いな。」
「いいえ。最初は金沢君。」
「あいつは口軽そうだな。」
「あの金髪のかわいいお嬢さんと結婚するって。」
俺は少し眼を見開いてムッとする。
「そんなでたらめなことまで言ってんのか?」
花は、ずいっと身を乗り出して聞く。
「どうなの?」
「しないよ。彼女の親父はどうしても諦められないみたいだが。」
「・・・・・・。」
「アメリカには行く。」
「え。」
花は、びっくりして俺をみやる。
「・・・・・・。」
俺は目をそらしてほおずえをつく。
外では、もう夏は終わりが近づいているというのにセミの鳴き声が聞こえた。
「いつ? ずっと?」
「・・・・・・。」
「だから、荷物減らしたってこと?」
立て続けに聞いてくる花に俺は念を押すように言う。
「松山や金沢に言うなよ。それから俺が花んちにいることも。」