冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 苦い顔をしている椿さんをみて、やはり化粧をすべきだったことに気づく。


「すみません、顔を洗ってすぐに化粧をしてきます」

「そうじゃない」

「えっ? あ、髪型ですか? 簡単には直したんですけど」

「ちがう。 俺が言いたいのは、その薄汚れた服のことだ」


 なぜ服を指摘されたのかわからなくて、目をパチクリさせてしまう。
 椿さんは、私がなにも理解していないことに気づいたようで、大きなため息をついてこう話した。


「お前にとってここは職場のはずだ。身なりを整えるのは社会人の基本だろう。何より、俺の家に似つかわしくない。景観を損ねる」

「おっしゃる通りです……」


 
< 121 / 321 >

この作品をシェア

pagetop