冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 
 なぜこんな初歩的なことに気づかなかったのだろう。化粧うんぬん以前に、服装について考えるべきだった。最後の発言は、ちょっとひっかかるけれど。

 椿さんは黒のカットソーにブラウンのパンツを着ている。シンプルだけど手足の長さが引き立って、モデルのようにかっこいい。


「なにもスーツやオフィスカジュアルをしろと言っているわけじゃない。軽く出掛けるときに着るようなものでいいから、着替えてこい」

「でも、こんな服か、会社用の服しか持ってきていません」

「なん……だと」


 椿さんの手から新聞がするりと落ちた。いや、大袈裟に驚きすぎでしょ。……とはさすがにツッコめない。


「軽く出掛けるとき用の服なんて、お金がなくて買えないです。なので、オフィスカジュアルに着替えてきます」

「いや、ひとまずそのままでいい」


 
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