冷徹副社長と甘やかし同棲生活
あの副社長が、女性に振られるなんて想像できない。……想像できないのに、なぜか笑えてしまう。
「それで、結局最近まで僕が通って家事をしてたよ。おかずを作って、タッパーに入れて持ってきたりね」
「ああ、だからタッパーがあったんだ。でもさ、通ってまでお世話するのは大変だったんじゃない? 勉強とバイトもあるのに」
「……ううん。お兄ちゃんにはすごく苦労かけちゃったから、このくらい当然だよ」
急に、葵衣くんの声のトーンが落ちた。さっきまで屈託のない笑顔で楽しそうに話していたのに、今は悲しげに瞳が揺れている。
何かいけない質問をしてしまったのだろうか。
葵衣くんの言葉の真意が気になったけど、これ以上は聞いてはいけないと察した。
「でも今は、私がいるから。葵衣くんは勉強に集中してね」