冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「葵衣くん、いいんだ。ありがと」

 葵衣くんだけに聞こえるくらいのボリュームでお礼を言う。

「こんなに可愛いのに、お兄ちゃんはわかってないなあ。美緒さん、今すっぴんでしょ?」

「あっ、そうだった」

 今になって、初対面の男性の前ですっぴんだったことに気がつく。恥ずかしい。


「すっぴんでここまで可愛い子、なかなかいないと思うけどなあ」

「えっ?」

 葵衣くんは、私にぐっと顔を近づけて、囁くようにこう言った。


「お兄ちゃんに飽きたら、僕のところにおいでよ」


 吐息が耳にかかって、くすぐったくって肩が跳ねた。色っぽい声と、肉食系な発言に身体が熱くなる。

 
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