冷徹副社長と甘やかし同棲生活
「今まで、平日に、しかもタクシーに乗って会いに来てくれたことなんてあった?」
「なかったかな、多分」
「多分じゃなくて、絶対ないよ」
「別にいいだろ、そういう気分だったんだから」
葵衣くんは、私と椿さんを交互に見ている。顎に手を当てているこのポーズは、考え事をしている証拠だ。
難しい表情をしていたと思いきや、ぱあっと明るくなる。
「ああ、そういうことかあ!」
「葵衣くん、どうしたの?」
「ううん、何でもない」
葵衣くんは、なぜか嬉しそうだった。反対に、椿さんは居心地が悪そうで、何回か咳払いをしていた。
「これから食事に行くのだろう? 俺がおごってやる」
「いや、僕は遠慮しとく。二人で帰りなよ」
「ええ、そうなの?」