冷徹副社長と甘やかし同棲生活
せっかく葵衣くんとゆっくり話せると思ったのに。さっきは彼から食事に誘ったのに、どういう風の吹き回しだろう。
もしかして、私に相談したいことでもあったのだろうか。
「美緒さん、もしかして何もわかってないの?」
「何を?」
葵衣くんは、椿さんを指差すと、にやりと笑って口を開いた。
「お兄ちゃんはね、美緒さんを――」
「――では、俺たちはそろそろ帰るとするか。仕事の邪魔をしてもいけないだろう」
椿さんの声が大きすぎて、葵衣くんの声はものの見事にかき消された。
気になって「葵衣くん、もう一度」と言おうとしたとき、急に椿さんに手を掴まれた。
「帰るぞ」
「つ、椿さん?」