冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 
 椿さんは私の手を引いて、店の入口まで歩いていく。
 強引だけど、掴む手の力は優しくて、ゆっくりと歩いてくれる。

 この行動の意味はよくわからないけれど、私の前を歩く椿さんはただただかっこよかった。


「二人とも、またねー」

「うん、バイトお疲れ様!」

 ぶんぶんと手を振る葵衣くんに、笑顔で挨拶をして店を出た。

 すぐにタクシーを捕まえて、二人で乗り込む。
 なぜか、手は繋がれたままだ。

 私としては、好きな人と手を繋げて嬉しいんだけど、なぜこうなったのかわからなくて戸惑ってしまう。
 タクシーの空調は寒いほど効きすぎているというのに、手に汗をかき始めた。


「あ、あの、この手は……」
「嫌か?」
「え? えっと、いやでは……」

 本音は嫌じゃないけど、それを言ってしまうとまるで“好きだ”と告白しているようだ。
 うまく言葉が出なくてもごもとしていると、椿さんが口を開いた。


 
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