冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「すこし疲れぎみなのかもしれません」

「そうか。疲れているときは無理しなくていいからな。そうだ、明日定時に切り上げるから、美味しいものでも食べに行かないか」


 本当なら、行きますって二つ返事で答えるのに。珍しく椿さんの帰りが早いのに、中垣さんのせいで断るしかない。


「……ごめんなさい。明日は職場の飲み会があるんです。この前の、報告会の打ち上げで」

 嘘をつくのが後ろめたくて、椿さんの顔が見れなかった。これまで、同期や菅野さんに小さな嘘をついてきた。

 そのたびに罪悪感を覚えたけど、今ほどではない。


 好きな人に嘘をつくのが一番辛い。けれど、本当のことは言えない。口止めされているというのもあるけど、椿さんに「中垣と二人きりになるな」と言われているからだ。


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