冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 口数が少なくて無表情なのはいつものことだけど、心なしか元気がなさそうに見える。
 ここ数か月でぐっと老け込んだ気がするし。

 本当は父さんにいろいろ聞きたいし励ましたいけれど、ぐっとこらえた。
 
――十一時になると、母さんは出入り口に【営業中】と書かれたプレートを吊るした。

 さすがに開店前から並ぶほどの人気店ではないけれど、数分後には四、五組のお客さんから注文をいただいた。


「今日は忙しくなりそうだね」

「だな」

 キッチンから客席は見えないけれど、注文のペースと長年の経験で混み具合が予測できる。
 今日は恐らく、十三時過ぎまでは時間との戦いになるだろう。


 
< 26 / 321 >

この作品をシェア

pagetop