冷徹副社長と甘やかし同棲生活
「……うん」
『僕さ、小さい頃、一人の時間が多くて、いつもお腹空いていてね。絵本を読んでいつも気を紛らわしてた。絵本ってすごいんだよ、悲しい気持ちを吹き飛ばして、いろんな世界に連れて行ってくれるんだ。僕も、こんな風に人を元気づける作品を作りたい。絵本作家になりたい、って思うようになった。今の夢は画家だけどね』
「うん」
『お兄ちゃんは、学業とバイトを両立しながら、僕を育ててくれた。お金を稼げるようにって一生懸命勉強して、就職してからは一日中仕事をしてた。お兄ちゃんの血がにじむような努力のおかげで、今僕はここにいる。……だから、僕はね、お兄ちゃんには自由に生きてほしいって思うんだ』
葵衣くんの声は、いつもよりも暗くて、何か思い詰めているようにも感じた。
彼の言う“自由”とは、どういう意味なのだろう。
静かに、葵衣くんの次の言葉を待つ。