冷徹副社長と甘やかし同棲生活


『お兄ちゃんが家族のもとを離れたのは僕のせい。本当は、お父さんとお義母さんが好きだったと思うんだ。そもそも、家族がこんなんになっちゃったのも、僕がいたからだし。だから、もしお兄ちゃんが実家に帰りたいと思っているなら、笑顔で背中を押してあげたいんだ』

「……葵衣くんは、椿さんからお父さんの話を聞いたの?」

『ううん、浩介兄ちゃんから聞いた。たぶん、そっちに行く前に、僕を訪ねたんだと思う』

「どうしてそう思うの?」

『浩介兄ちゃん、隆弘お兄ちゃんに彼女がいることを知らなかったみたいで、こう言ってたんだ。“隆弘が家に戻ったら、お見合いをさせたい”って……』
 

 椿さんが、お見合い……?
 頭ががんがん鳴っている感じがする。

 そんなことが起こりうるなんて、予想だにしていなかった。


「お見合いって、どうしてそんな話に……」
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