冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「たまには緑茶もいいな」

「そうですね。今度急須を買ってきますよ」

「……ああ、頼む」

 椿さんは、どこか元気がない。実家で何かあったのだろうか。
 お見合いの話を聞いて、私にどう切り出そうか迷っているのかもしれない。

「久しぶりの実家は、どうでしたか……?」

「家は特に変わっていなかった。親は、とても老けていたよ。十年以上も経っていたら、歳もとるよな」

「そうですか……」

「二人とも白髪混じりで、しわも増えて……親父は腰が曲がっていたな。母さんは、俺の顔を見たとたんに泣いていた。元気でよかったって、何度も言って」

 こんな風に苦しそうな顔をして話す椿さんは初めて見た。
 心がえぐられるように苦しい。

 
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