冷徹副社長と甘やかし同棲生活

――不思議だ。副社長に名前を呼ばれた瞬間、身体中に電気が走ったように感じた。

 この人に私のことを知ってほしいと思った。会社の志望動機だけじゃない。
 今までやってきたこと、得意なこと、苦手なこと、一番頑張ったこと、全部全部知ってほしい。


 そして……私をあなたの下で働かせてほしい。そう思った。
 初めて会ったばかりなのに、どうしてこんな気持ちになるのだろう。


「私は子供のころから実家の定食屋を手伝っていました。この経験から、決められた時間の中で優先順位を決め、要領よくこなすことを……」
「広告事業に興味をもったきっかけは、定食屋のある商店街を活気づけたいと考えたことです」


 数分前の自分がみたら驚くくらい、すらすらと言葉が出てきた。
 初っ端に失敗したけれど、今までで一番うまく話すことができた。


 あとは、副社長がどう判断するかだ。

 
< 4 / 321 >

この作品をシェア

pagetop