冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「ありがとうございます! よろしくお願いします!」


 副社長に涙を見られるのが恥ずかしくて、深く頭を下げて顔を隠した。
 嬉しくてたまらない。ようやくこのリクルートスーツともおさらばできる。

 でも、きっとそれだけじゃない。
 副社長とまた会えるっていう事実が、すごく嬉しかった。

  
 来年の四月が待ち遠しい。早く社会人になりたい。副社長に会いたい。
 またあの優しい笑顔が見たい……。

 内定が決まってから大学を卒業するその日までずっと、私の胸は期待で満ち溢れていた。


 ――だからこそ、入社後、ある“事実”を知ったときの衝撃は凄まじかった。



 
「ねえ、知ってる? 副社長って、社員から“鬼の副社長”って呼ばれているらしいよ」



 
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