冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 あの時副社長は、Tシャツの上にパーカーを羽織って、ジーンズとスニーカーを履いていた。
 その服装自体は普通だと思うんだけど、副社長のイメージには合わない気がする。


「そうそう。あれ、多分変装してたんだと思うよ」

「変装!? なんのために」

「もちろん、美緒のためさ」

「わ、わたしのため?」


 いきなり突拍子もないことを言い出すから、驚いて声が裏返ってしまった。
 私の様子が面白かったのか、母さんはくすくす笑っている。


「まあ、本当のことは本人しかわからないけどさ」と前置きを挟み、母さんは考えていることを話し始めた。

 
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