冷徹副社長と甘やかし同棲生活
といいつつ、内心は嬉しかった。本当のことはわからないけれど、副社長が私を気遣ってくれていたのならうれしい。変装してまで来るほど、うちの味を愛してくれているということもだ。
「隆弘くんが会社で厳しいのも、皆のことを想ってるからかもしれないよ。……まあ、どちらにせよ、自分の目でしっかり確かめておいで。隆弘くんがどういう人間なのか。噂に惑わされずにね」
「うん、そうだね。ありがとう、母さん」
母さんは私を愛おしそうに見つめながら、頭を撫でてくれた。
母さんに触れられると不思議と落ち着く。
“噂に流されずに”という言葉が胸にすとんと落ちた。
私はまだ副社長のことを何も知らない。
どうして鬼のように厳しいのか、なぜ昔お金に困っていたのか。
どうして一年前から変装するようになったのか、何もわからないし、知りたい。