冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 これはどう見ても、空き巣に入られた後だ。
 
 副社長はなぜか冷静で、散乱した衣類をまとめて床に置き、身軽になったソファに腰を下ろしていた。


「大変! 副社長、すぐに通報しないと!」


「……は?」


「のんきに座っている場合ですか? 何か無くなっているかもしれないんですよ」


「意味不明なことを言うな。それより、早くこっちに来てコーヒーを淹れてくれ」


 どう見ても空き巣に入られているのに、副社長はちっとも関心を示さない。
 ここまでのセレブになると、泥棒くらいでは痛くもかゆくもないというのだろうか。

 たとえ副社長がそうでも、私は犯罪者を見過ごすことはできない。
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