冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「まずは、なぜお前に家政婦を依頼したのか話しておきたい」

「はい、お願いします」

「一言で言えば、かしわぎの料理を家で食べたいと思ったからだ。あの味を好きな時に、しかも家で食すことができる。これ以上の幸せはあるのだろうか? いや、ないと断言していい」

「あ、ありがとうございます」


 副社長はいたって真剣な表情で、かしわぎへの愛を語っていた。
 すごく嬉しい、嬉しいんだけれど……もっと幸せを感じることはあるんじゃないか、と思う。

 うちの料理はおいしいけれど、特別な味付けではない。
 父さんと母さんに助けられた経験が隠し味になって、副社長の胃袋を掴んでいるのだろうか。


 

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